よみもの
不正出血
婦人科での主訴(受診の主な目的)の代表は、出血(性器出血)です。
性器出血のことをすべて「せいり(生理)」や「月経」と表現なさる方がほとんどですが、 女性の出血は、すべてが月経ではありません。
1.性交のあとの出血のように「がん」の疑わしい出血、
3.排卵がうまくゆかず、まとまらない出血が出たりやんだりする場合 などがあります。
そのほか、子宮頸部にポリープができていることや、膣炎を起こしていて出血することもあります。 あとまわしにせず、早めの受診がよいと考えます。
上記の三つの場合のうち、まずは悪性疾患(がん)のチェックは重要です。 20歳以上(未成年でも性交経験のあるかた)は症状が何もなくても、定期的に子宮頸がんの検診をうけるべきでしょう。 (30歳以上のかたは乳がんの検診も受けましょう)
順調な月経の場合は出血の周期が安定し、出血がはじまって1,2日目が最も量が多く、 あとは比較的すみやかに減少して4,5日で終わるのが典型的なパターンです。 もし、量の定まらない出血が繰り返し起こる場合、性行為のある方は、 妊娠の有無について、早く確認すべきでしょう。月経が遅れている場合ももちろんです。 薬局で、敏感な尿妊娠検査薬を購入することができます。妊娠の有無を一番早期に判断できる方法は、尿による検査です。 基礎体温を測定してあると、診断に大変参考になります。 基礎体温を測定なさっている方は、受診されるとき必ずグラフを持参してくださるといいです。 (せっかく基礎体温をつけているのに、受診するとき持ってこない方が、割と多くいらっしゃるのです...)
過多月経
☆月経の量が多すぎることを過多月経といいます。自分の月経血の量のことは、ふだん話題にすることもありませんし、ひとと比較するような機会もありません。 適当なのか多すぎるのかなんて、あまりわからないで過ごしていることと思います。
☆めやすは、「かたまり」が出るか出ないかです。レバーのように、血液が固まっておりてくる場合、月経過多である可能性があります。
☆それから、持続期間はふつう5日ほどです。初日、二日目は多量ですが、あとはすみやかに少なくなるのが月経の機序としてリーズナブルなのです。 それが、しっかり7日間ある、もしくはそれ以上だという方は、なにかしら治療を考えた方がよいと思います。
☆量が過多である場合、月経痛も辛いことが多いです。
・血液は、栄養のかたまりです。一生懸命ごはんをたべて栄養をとり、からだに蓄えているものです。 鉄、カルシウム、その他のミネラルもたくさん含まれています。月経で、出なくてもよい量が失われてしまうのは、大変もったいないことです。 そして、月経のあいだ痛みが強く、痛み止めが欲しいと思うくらいだという方も、ぜひ受診をおすすめします。がまんなんて、する必要はありません。鎮痛剤を、遠慮なく飲みましょう。
・よく患者さんがおっしゃるのは、「ずーっと、そう(多いこと)でしたから」ということです。ずっとそうだったということは、ずっと、摂取した栄養をむだに流していたということです
腹圧性尿失禁
腹圧性尿失禁とは、咳こんだり、くしゃみをするなどおなかに力が加わったとき、尿が漏れ出てしまうことをいいます。
ヒトは二足歩行を行います。四つ足歩行の動物とちがい、おなかの中身を支える力が重力によって骨盤の底に向かいます。 女性は分娩のために産道をかたちづくるべく、骨盤の形が男性よりも平たくできており、 この重力に弱い構造となっています。実際出産を経験し、また年齢を経ることにより、 骨盤底の筋肉や靱帯がゆるみ、膣壁や子宮の下垂をおこしてくることがあります。 個人差がかなり大きく、30代あるいは20代でも起こしうるものです。分娩後に下垂感を自覚したことのある方も多くあるかと思います。出産をしたことがない方に起こることもあります。
前膣壁は膀胱と接し、後膣壁は直腸と接します。 前膣壁がゆるんで下垂すると膀胱もいっしょにたわみ、膀胱の形がかわって残尿を生ずるようになります。 すると腹圧がかかったとき残尿がすこし漏れて出ることになるのです。 また後膣壁のゆるみがあると、直腸の壁もゆるんで便がたまってしまい、便秘になることがあります。 通じがあるにはあるけれど、すっきり出ないということが起こります。
残尿があるということは膀胱炎が起こりやすい原因にもなります。
下垂の程度が軽くても、自覚する症状(下がってきている気がして気持ちが悪い、など)は強いこともあります。
治療のためには、まず骨盤底の筋肉や靱帯をしめる体操をすすめます。これによって約半数の人は症状が軽くなるといいます。 胃下垂や子宮下垂に効果のある漢方薬を併用することもありますが、 やはり物理的に下垂した組織を「もとにもどす」ことは望めません。 症状によっては手術療法をおすすめすることもあります。 個人個人により症状の強さはさまざまですので、気になる方は一度受診をおすすめします。
月経のトラブル同様、恥ずかしい気持ちが先立ち、ひとと話題にすることもありません。 ずっとがまんして過ごされている方がほとんどです。 命にかかわりのないこととはいえ、明るく楽しい暮らしのためにはけして小さなことではないと考えます。
基礎体温
基礎体温は「婦人体温計」という通常の体温計より目盛りがひとつ細かい体温計を用いて測定します。 水銀計でも電子式のものでもかまいませんが、電子式の場合は電池切れや先端部分の老朽化のないものを用意してください。 一本1000円から2000円で購入できます。高価なものは必要ありません。
婦人体温計を枕元に置き、片手を伸ばせばすぐ届くようにしておいてから、休みます。 ぐっすり、熟睡して目覚めたときに体温計をとり、舌下(舌のうらがわ)にはさんで体温を測定します。 この際、上体をむくっと起こして体温計をとるなどしてはいけません。手だけ動かして体温計をとるように、よけいな運動をしないように気をつけます。
通常、体温を測定するよりも一つ目盛りを細かく、小数点第二位まで、体温を測定します。 例:36.24度
測定した体温は、グラフに書き込みます。なるべく、毎日測定しましょう。
ときに腹痛があったり、おりものに気がついたりすることもあります。そういったエピソードは備考欄に記録します。。
昨今は、多くの方がスマホに体温を記録されています。でもスマホの画面は小さく、短い期間しか見渡すことができないため、診察で活かすには不十分であることがほとんどです。
薬局で、ノート型になった体温表を売っています。一冊300円ほどですので、それに記録するのが一般的で良い方法だと考えます(グラフの目盛りを自作なさる方もありますが、目盛りの取り方によって読みづらいケースも見受けます)。また、インターネットサイトで体温表をダウンロードできるところもありますので、それを利用なさってもよいでしょう。
☆基礎体温表をダウンロードできるサイト紹介...
花王ロリエのサイト
避妊
妊娠を期待しないで性交を行う場合、必ず避妊を行わなくてはなりません。
(当然のことなのですけれども、あえてここにこうして明記しなければならないほど、きちんと認識していただく必要があるのです) 避妊方法として、現在あてにしてよいのは下記の3種類だけです。 (男性女性ともに、不妊手術をのぞきます。可逆的な手段のみ、挙げます)
(注)...3.については、使用の仕方に問題があることがかなり多いように見受けられます。専門家の説明・指導をぜひ、お受けになるべきです。 避妊の相談を希望して当院を受診なさる方も、もちろんいらっしゃいます。 とても大切な知識です。